Atsuko Nakamura Studio-中村厚子

繰り返す波、揺れる境界
Repeating waves, swaying boundaries

Performance Video
2019
5’01”
瀬戸内国際芸術祭2019 本島

本島での滞在制作中、地元の盆踊りに出会った。それは私の知るものとは全く違う、おそらく盆踊りの原型とも言えるものだろう。神社の境内には農村歌舞伎の舞台があり、そこに初盆の方の遺影が広場を望むように置かれている。広場の中央には櫓が組まれ、ゆったりとした太鼓の音に合わせ、歌い手のお年寄りが、村に古くから伝わる文言を声をうねらせながら歌う。歌中には村の故人の名前も登場する。村人や帰省中のお孫さんたちは櫓の周りに円陣を組み、古くから伝わる踊りを太鼓と歌の音に合わせて踊る。中には、何かを包んだ手ぬぐいを背負って踊る人もいる。私も見よう見まねで輪に加わった。踊る人が増えれば円陣は大きくなり、人が減れば円陣は小さくなる。それを繰り返しながら、とても静かな盆踊りは続く。

私は踊りながらハッとした。「あ、亡くなった人と、生きている人が一緒になって踊っている！」手ぬぐいで包まれ、背負われていたものの中身はお位牌だった。この踊りを真正面の特等席で楽しんでいるのは、初盆のお遺影の方だ。自然と小さくなったり、大きくなったりする踊りの輪は、上から見れば満潮になれば小さくなり、干潮になれば大きくなる島のようでもある。揺らぐ島の境界、揺らぐ死者と生者の境界…そして繰り返される島の暮らし。この盆踊りは、まるでこの島独特の暮らし、思考、生活を体現しているように感じた。私は同じ広場で、島で感じたことを歌に乗せ、島に伝わる踊りを皆で舞った。

この作品を制作するにあたり、島の白井さんはじめ、多くの島民の皆様、ならびに多くの方々から多大なるご協力を頂きました。心から感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

In the producing of this work, I’ve gained great cooperation from people in Honjima and many others too. I deeply and sincerely appreciate all of You. Thank you so much.